


「納入仕様書の電子交換への切り替え。
『外堀を埋め、内堀を埋め、理を立てて』説得しています」
日本ビクター株式会社(以下ビクター)では、2006年10月から部品メーカー数社と共同して、納入仕様書を従来の紙ベースのやりとりから、 JEITA/ECALGA標準に基づく、電子交換へと切り替えている。納入仕様書の電子交換のメリット、それを社内に浸透させる苦労などについて、生産技術本部ものづくりセンターEOAグループ長 中谷正彦氏に詳しく聞いた。

ビクターでは、現在、電子情報技術産業協会(JEITA)のECALGAという仕様に基づいた技術情報電子交換を積極的に推進しています。まず、「これまでやったこと」、「これから行う予定のこと」、「これまでALSIをどう使ってきたか。今後はどう使っていく予定か」について、お聞かせください。
「これまで(2006年まで)やったこと」は以下の通りです。
| 時期 | 内容 | 補足 |
|---|---|---|
| 2002/10〜 | カタログ情報検索(※1) | JEITA/ECALGA |
| 2005/10〜 | 環境情報交換 | 独自仕様 |
| 2006/10〜 | 納入仕様書交換 | JEITA/ECALGA |
「これから行う予定のこと」としては、今後「廃止品情報交換」、「購入仕様書交換」、「部品情報提供」、「技術見積」、「サンプル要求」等の電子交換を、順次、推進する予定です。最終的にはEDA(Electronic Design Automation)データ交換までを視野に入れています。
「これまでALSIをどう使ってきたか。今後はどう使っていく予定か」ですが、現在、納入仕様書交換のためのソフトウエアとして、ALSIの ECALGA-SPXを使用しています。ビクターとしては、基本的には、独自仕様ではなく業界標準を積極的に採用する方針です。ALSIでは、今後とも JEITA/ECALGAの仕様の拡充に合わせ、それに対応するアプリケーションを開発していく方針であると聞いており、期待しています。
JEITA/ECALGAの活用により、今後、どんな成果が予測されますか。
ビクターでは納入仕様書の電子交換の効果は以下の通りと予測しています。
(1)納入仕様書の形態:紙→電子データ
―仕様交換の「状態」がわかる(いつ、誰が、どの様に 等)
―紙の出図配布が不要
―仕様変更処理が容易
―紙の保管が不要(電子データ保存)
(2)納入仕様書の入手から認定までの時間短縮:週単位から日単位
(3)社内部品DBの仕様入力:手入力→自動連携
納入仕様書を電子的に交換できるしくみが確立すれば、発注者(セットメーカ)および受注者(部品メーカ)の双方にとって、大きな効果が得られると期待できます。効果予測をまとめると、以下の通りです。
効果について、順々にお聞きします。
効果その1:「運用コストの削減」
ECALGAを導入して、紙の納入仕様書を電子化した場合、「スキャナー入力の設備費・人件費」、「社内部品DBへの登録費」、「紙代」などのコストが削減されます。システムを導入すれば、「ASP利用費」、「社内設備費」などのコストが新たに発生します。それでも、導入前と導入後を比べれば、月100万円のコスト削減がなされると試算できています。
効果その2:「業務の『見える化』」
納入仕様書交換の業務を実際に行っているのは、設計現場です。設計現場にとっては、運用コスト削減よりも「入手から、仕様確定・出図までの時間短縮」や「交換業務の『見える化』」に、よりメリットを感じるようです。
業務が『見えない』状況を考えてみます。納入仕様書を紙で交換する場合は、仕様確定までの状況を把握できるのは、設計現場の担当者と部品メーカの営業担当者のみです。周囲の人は、状況が把握できません。『見え』ません。
ECALGA導入後は、当事者のみならず、周囲の関係者も状況が『見える』ようになります。業務を大幅に効率化すると期待できます。
効果その3:「コピー・配布の削減」
部品メーカの皆様にとって、紙の納入仕様書のコピーおよび送付作業は、大変な工数がかかっているようです。
セットメーカは、納入仕様書の出図部数を、部品メーカに対し要求します。そのため、部品メーカはそのコピー作業に追われます。
送付作業も大変です。仕様の変更が発生すると、同じ作業の繰り返しになります。このコストと手間は、納入仕様書の電子交換により、一気に解消します。
効果その4:「保管コストの削減」
ビクターでは、納入仕様書は技術資料として、数十年間保管をしています。これが紙での保管から電子データでの保管に変われば、保管コストは大幅に削減できます。また検索、閲覧も効率化します。紙での保管の場合、数十年分の資料から必要資料を探し出すことは容易ではありません。電子データであれば検索・閲覧は、いたって容易です。

ここまでの話で、納入仕様書の電子交換のメリットを多角的にご説明いただきました。
次に納入仕様書の電子交換を社内に浸透させるプロセスについて、お聞きしたいと思います。
実際に社内によびかけて導入するまでのプロセスは、スムーズでしたか。
いいえ、スムーズではありませんでした。今まで、紙で作業を続けていた人の「紙への執着心」は、予想以上に大きく、説得するのは大変でした。「会社の方針だから」という説明でも説得できませんでした。人は皆、概して、変化を好みません。「会社の方針だから」と説明しても、やることに対して「必要か否か」を個々に判断します。
紙への執着心を持つその人たちを、どのように説得したのですか。
外堀を埋め、内堀を埋め、理と論を立てて説得しました。
まず「外堀を埋めること」として、担当役員や事業責任者を説得しました。また、これに関する社内規定も策定しました。次に「内堀を埋めること」として、その他の業務もIT化し、業務にかかわる情報の電子化を積極的に推進しました。
最後に「理と論」。ビクターは、グローバルに事業を展開している会社です。設計や生産は国内・外で分散しています。その情報の交換は紙を使っていたのでは大変な時間がかかります。設計から生産までの時間短縮に、情報の電子化は必須です。これが実現できてこそ、スピード感のあるグローバル事業展開が可能となる。そのように理論を立て、説明しました。
以上のように、根気強く説得していった甲斐もあり、今では反対する人はだいぶ少なくなりました。
今後の計画と、ALSIへの期待についてお聞かせください。
「ビクターは今後も、独自方式ではなく、
業界標準に則る形でEDIを推進していきます」
冒頭で述べたとおり、ビクターとしては、今後も納入仕様書のみならず、「廃止品情報交換」、「購入仕様書交換」、「部品情報提供」、「技術見積」、「サンプル要求」などあらゆる情報交換を電子化していく予定です。電子化の際の標準は、JEITA/ECALGAなどの業界標準を積極的に採用していきます。そうして、部品メーカの皆様にも広くご理解とご協力をいただきながら、歩調を揃えて、情報の電子化を推進してまいります。
ALSIは、JEITA/ECALGAの標準化に積極的参加し、今後もECALGA-SPXのみならず、対応ソフトウエアを継続して開発していくとのこと。その決意を頼もしく思っています。今後も、共に協力して、企業間の情報交換の電子化、合理化、ローコスト化を推進していきましょう。
