テクサジャパン株式会社
秒単位で送られてくる位置情報を
リアルタイムで取り込み
水上メガソーラーの異変を
いち早く検知する仕組みを構築
代表取締役
坂口 哲哉 氏
テクサジャパン株式会社
取締役 R&Dマネージャー
坂口 慶介 氏
フロートの位置情報を把握することで、
水上メガソーラーの事故を防ぎたい
まずは御社の事業内容と、「Sumo Logic」の導入に至った背景についてお聞かせください。
当社は2007年に設立された建設会社です。もともとは携帯電話の基地局建設など、電気通信工事を事業の柱にしていましたが、12年ほど前から「現場の安全や品質管理をもっと効率化できないか」と考え始め、既存のものがないなら自分たちで作ろうと、「ものづくり」にも力を入れ始めました。そこで、特許を取得しつつ自社製品を開発していたところ、国により「再生可能エネルギー比率を2030年度に36〜38%程度まで高める方針」が示されたことから、太陽光発電所の建設が活性化し、特に兵庫県にはため池が多いことから、これらを活用した水上メガソーラー案件が増加しました。
水上メガソーラーは、陸上よりも発電効率が良い一方で、「水上に浮かんでいる」という環境から台風などの自然現象には非常に影響を受けます。最近では台風や突風でフロート(浮体)が流され、発電所ごと崩壊する事故が発生しており、社会問題にもなっています。こうした施設は一度崩壊すると復旧は困難で、地域住民の方々にも不安を与えてしまいます。こうした事故を防ぐためにも、なんとか事前に予兆を検知し、早期に対策を打てないか。その想いが、このたび開発した早期警戒システムの原点です。

具体的にはどのようなシステムを構想されたのですか。
水上に浮かぶメガソーラーは、常に風や波で動いています。しかし、一部のアンカーが外れたり、係留索が切れたりすると、そこをきっかけに連鎖的な崩壊が始まります。これを早期に見つけるためには、センチ単位・ミリ単位で正確な位置情報を把握する必要があります。
そこで着目したのが、高精度測位サービス「ichimill(イチミル)」です。このサービスを活用すれば、全国の基地局網を活用したRTK測位(※)により、誤差数センチという高精度の位置情報が得られます。ichimillの端末を水上メガソーラーに取り付け、その動きを常時監視するために、システム「Sustain Guard」を開発することにしました。
※RTK測位: GNSS受信機で得た位置情報データを補正し、リアルタイムに高精度な測位を行う手法
膨大な量の時系列データがRDBを圧迫、
「ログ」として管理する発想に転換
開発にあたってはどのような課題があったのでしょうか。
最大の壁はデータ量でした。水上の設備は常に揺れ動いているため、異常を検知するには「1秒に1回」という高頻度で位置情報を取得し続ける必要があります。当初はAzure上のSQL Serverなど、一般的なリレーショナルデータベース(RDB)でシステムを構築していたのですが、端末の数が増え、データが蓄積されていくと、DBの負荷が限界に達してしまいました。1秒ごとに送られる膨大な時系列データについて、単純な書き込みはできても、過去データの参照や、異常値の傾向分析を目的として検索を行うと、レスポンスが返らず、場合によってはDB自体がダウンすることもありました。
水上メガソーラーは数千枚、数万枚というパネルを抱えていますので、これでは実用的な監視システムとして機能しません。この結果を受けて、DBでの管理には限界がある、ログとして処理すべきではないかと考え、アプローチを変えることにしたのです。

パフォーマンスの高さを評価しSumo Logicを選定、
パートナーにはサポート面を期待しALSIを指名
そこで統合ログ管理製品の導入を検討されたわけですね。
はじめにログ管理の分野で有名な製品を検討しましたが、導入のハードルが非常に高いと感じました。中でも、私たち自身が製品の販売パートナー資格や認定を取得する必要がある点が大きなネックだった他、契約形態やライセンス体系も非常に複雑でした。私たちが欲しいのは、あくまで「Sustain Guard」のサービスの裏側で動くインフラであって、ログ監視ツールそのものを売りたいわけではありません。これでは採用は難しいと悩んでいたとき、「Sumo Logic」の紹介を受けたのです。
Sumo Logicを選定した理由について教えてください。
理由は大きく3つです。一つ目は時系列データの扱いに長けており、検索が高速な点です。RDBでは数分かかる検索が一瞬で終わるパフォーマンスの高さが魅力でした。二つ目がクラウドネイティブ(SaaS)であることです。オンプレミスでサーバーを構築・運用する必要がない上、スケーラビリティも確保されているため、データ量が急増してもインフラの増強が容易です。三つ目がコストパフォーマンスの良さと柔軟なライセンス体系です。従量課金モデルでスモールスタートが可能、私たちのサービスに組み込みやすい契約形態でした。
導入のパートナーにALSIを選んだ決め手は何だったのでしょうか。
セキュリティ企業としての信頼感と手厚いサポート体制です。私たちが扱うデータは、発電所という社会インフラの情報であり、将来的には自治体の防災情報も扱う可能性があります。そのため、堅牢なセキュリティは必須の要件でした。そういう意味では、ALSIは長きにわたってセキュリティ製品を展開しており、豊富な知見を有しているので安心感がありました。
また、Sumo Logicは海外製品なので、導入や運用において言語やサポートに不安があります。この点、ALSIが間に入ることで、日本語での十分なサポートが期待できると判断しました。
水上設備の異常を検知してアラートを発報、
ダッシュボードでさまざまなステータスを可視化
導入のスケジュールについて教えてください。
2024年夏頃から本格的な検討を開始し、ALSIにコンタクトしました。7月にはPoCとして実際にichimillのデータを流し込み、パフォーマンスや使い勝手を検証した結果、期待通りの成果を確認できました。その後、年末に正式採用を決定、翌年の2025年4月から本番運用を開始しています。Sumo Logic はSaaSで提供されるため、契約から実装までのリードタイムは非常に短期間で済みました。
具体的にはどのようなシステムを構築されたのでしょうか?
ichimillから送られてくる位置情報のログを、API経由でリアルタイムにSumo Logicへ取り込んでいます。あらかじめ設定した閾値(例えば、初期位置から10cm以上動いたなど)を超えた場合、アラートを発報します。また、各水上設備の現在位置に加え、高さ(水位)情報、過去からの変位の推移などの各種ステータスを、ダッシュボード上でグラフや地図として可視化しています。
このシステムを構築する上で重要だったのが、データのゆらぎの処理でした。GPSなどの測位データにはどうしても若干の誤差やノイズが含まれます。単に数値を見るだけでは、本当に動いたのか、誤差なのかの判断が難しいのです。そこで、移動平均を取るなどの統計処理を行って誤差やノイズを除去し、本当に危険な「変位」だけを抽出。アラートを出せるようにしました。
「TBM」から「CBM」へ、
常時監視による予兆検知が安心につながる
Sumo Logicの導入によって、どのような効果が得られましたか?
膨大な量のデータをリアルタイムに監視できるようになったことで、「予兆検知」が可能になりました。従来の設備保全は、あらかじめプランを立てて定期的に点検を行うTBM(Time Based Maintenance)が主流でしたが、これからは設備の状態を常時監視し、予兆があったところで適切なメンテナンスを行う、CBM(Condition Based Maintenance)に変わろうとしており、国もこれを推進しています。今回、Sumo Logicの導入による常時監視が実現したことで、当社としてもCBMの考え方に合致したサービスを提供できるようになりました。また同時に、少子高齢化で現場での人手不足が進む中、ITを活用し少人数で保守する「スマート保安」にも貢献できると考えています。
水上メガソーラーを例にとると、アンカーが外れてフロート全体がじわじわと流されている、といった微細な変化も捉えることが可能になりました。崩壊してから駆けつけるのではなく、崩壊しそうという段階でアラートを受け取り、適切な対策を打てる。これは大きな安心感につながります。
またシステムの運用面では、インフラの管理にかかる手間がほぼなくなり、アプリケーションの開発やデータ分析といった付加価値の高い業務へリソースを集中できるようになったのは大きな効果ですね。
ビジネスを支える
「防災インフラの頭脳」としての役割を期待
今後、このシステムをどのように展開されていく予定ですか?
「Sustain Guard」は水上メガソーラー向けに開発したのですが、この仕組みは地滑りの検知にも応用できることがわかってきました。近年、豪雨災害による土砂崩れが頻発していますが、山間部や崖などの危険箇所にセンサーを設置すれば、斜面のわずかな変位を検知し、崩れる前に避難勧告を出すことが可能になるかもしれません。実際、既にいくつかの自治体から引き合いをいただいており、実証実験も進んでいます。また、ため池などの水位をリアルタイムに監視し、氾濫を検知する仕組みはすでにいくつかの自治体様で運用していただいております。
最後に、御社の今後のビジョンについてお聞かせください。
これまでバラバラだったサービスを統合し、「Texa Safety」ブランドで防災・安全・安心を提供するソリューションカンパニーへの進化を目指しています。建設業で培った現場のノウハウと、ITの力を融合させることで、業界にはなかった新しい価値を提供できると確信しています。その意味でも、Sumo Logicには統合ログ管理製品という枠を超えて、私たちのビジネスを支える「防災インフラの頭脳」としての役割を期待しています。

テクサジャパン株式会社
所在地:兵庫県西宮市小松北町2-8-21
2007年設立。主な業務は太陽光発電工事や電気通信工事などですが、代表の「現場に必要なものが、世の中にないなら自分たちで作ろう。」という想いのもと、数年前に特許を取得。これをきっかけに、「ものづくり」にも力を入れるようになりました。現在は、「社会に必要とされる会社を目指す」という経営方針に合わせ、豊富な現場経験を生かし、安全・品質等に寄与できる資機材、中でも昨今建設の続くメガソーラー発電設備の保守に貢献可能なシステムの開発に取り組んでいます。