海外拠点のクレーム情報を
リアルタイムで把握
深刻化する前にトラブルの芽を摘む
プロアクティブな対応が実現
HMI(Humnan machine Interface)分野のリーディングカンパニーとして、制御用スイッチや表示器、プログラマブルロジックコントローラなどの電気機器製品を取扱うFAメーカー、IDEC(アイデック)。
同社では、従来利用してきたクレーム管理システムのサポート終了を機に、新たなシステムへのリプレイスを検討しました。多言語対応に加え、クレーム対応から再発防止のプロセスを一貫して処理できる点が評価され、アルプス システム インテグレーション(以下、ALSI)の「ECOAS(エコーズ) クレームマネジメント」を採用しました。
これにより、海外拠点のクレーム情報をリアルタイムで把握できるようになり、問題が深刻化する前に迅速かつ的確な対応が可能になりました。今回は、導入の経緯や具体的な効果について、品質保証センターで生産品質保証を担当されている藤原章督氏にお話を伺いました。

- IDEC(アイデック)株式会社
品質保証センター グローバル品質保証グループ 生産品質保証チーム 藤原 章督 氏
当社は、ファクトリーオートメーション(FA)分野を中心に、人と機械を繋ぐHMI製品を開発・製造・販売を行う制御機器の総合メーカーです。スイッチ製品は国内トップシェアを誇り、3ポジションイネーブルスイッチでは、世界シェアの9割を占めています。また、「安全」に対する強いこだわりも当社の大きな特徴で、創業以来、当社のDNAとして受け継がれています。
当グループでは、クレーム対応全般(故障品の調査・分析、報告書作成、再発防止の処置等)に加え、クレーム管理システムの運用・管理も担当しています。製品の品質は、「安全」を支える根幹の一つであり、その責任と使命を果たすべく、日々の業務に取り組んでいます。
以前、当社ではクレーム管理に別のシステムを利用していましたが、そのシステムは日本語にしか対応していませんでした。それゆえ、生産拠点であり大きな市場でもある中国でクレームが発生した際、中国語でクレーム内容を入力すると、文字化けしてしまうという問題がありました。このような状況では、日本語の分かる現地担当者が翻訳し、日本語で報告するという手順をとっていましたが、手間と時間が掛かるため、お客様対応の遅れにつながっていました。
そうした中、2024年に既存システムのサポート終了が発表
されたため、代替システムの検討を開始しました。
当初は、既に利用していた「Salesforce」をベースにクレーム管理システムを構築することを考えていました。しかし、品質管理の業務は会社ごとに固有の要件があるため、当社の場合も非常に多くのカスタマイズが必要でした。これらをSalesforceベースで対応しようとすると、スクラッチ開発並みのコストがかかると判明し、断念することになりました。その結果、より柔軟に対応できる別のシステムを検討することとなったのです。
当社とALSIの親会社であるアルプスアルパインとは2021年に合弁会社を設立するなど深い関係があり、ビジネスパートナーとして信頼感がありました。そこで、2022年末にWebセミナーに参加したのち、問い合わせを行いました。
ECOAS クレームマネジメントは、中国語を含めた多言語対応に加え、クレーム対応と再発防止の流れがリンクしている点が魅力ですね。従来、当社ではこの2つの業務を別々に扱っており、クレーム対応は既存システムで、再発防止=生産工程における対策は各部署が現場からの報告をExcelで一覧にまとめ、紙ベースで処理していました。こうした情報は各部署で分散していたため、品質保証センターでは全体を把握できず、個別に問い合わせる必要がありました。その点、ECOAS クレームマネジメントであれば、クレーム対応から再発防止までを一貫して管理できるため、情報の可視化と業務効率の向上が期待できます。
2023年にトライアルを実施しましたが、当時はサービス開始から間もないこともあり、かなり時間をかけて検証を行いました。その結果Salesforceとの連携もしっかり確認できましたし、Salesforceに集約された情報を自動的にECOAS クレームマネジメントに反映するなど、最適な設定が可能になりました。
導入時の工夫としては、当時コロナ禍の影響で対面での打ち合わせが制限されていたため、リモート会議を活用しコミュニケーションを密に取ることで、スムーズに作業を進めることができました。また運用面では、操作性は既存システムの操作性を継承する形にすることで、ユーザーが新しいシステムに戸惑うことがないようにしました。
苦労した点は、私たちが普段使っている言葉と、アプリケーション上で使われている言葉が、完全には一致しないことでした。アプリケーションの各項目が、現場のどの業務や用語に該当するのか、難しい場面もありました。そのため、両者をすり合わせ、ギャップを埋めていく作業に一定の時間を要しました。
第一に、海外拠点におけるクレーム情報がリアルタイムで直接入ってくるようになりました。従来は月に1回、Excelでまとめた情報が届く程度で、特に中国の場合は翻訳作業が必要だったため、対応までに時間がかかっていました。現在ではそうした手間が不要になり、情報の即時共有が可能になっています。
また、海外では国内にはない製品も存在しますが、それらのクレーム情報も日本側でいち早く把握できるようになり、大きなクレームに発展する前に問題を解決する、プロアクティブな対応が実現しています。
担当者の業務負荷も軽減されました。以前は月末にクレーム情報を集計していましたが、海外との時差もあって就業時間内に情報が揃わず、上司から催促を受けることもありました。今では、そうしたプレッシャーから解放され、残業時間も削減されています。
重大クレームへの対応が迅速化しています。以前は、すべてのクレームに対して1次調査のみを行い、必要に応じてその場で詳細まで調査するという流れでした。そのため、そのクレームの重大性を判断するには、個別に聞き取りを行う必要があり対応に時間がかかるケースもありました。ECOAS クレームマネジメントの導入後は、全てのクレームに対して1次調査を実施し重大なクレームと判明した時点で、関連する複数の部署が連携して詳細調査を行うプロセスに変更しました。これにより、重要なクレームを関係部署全体で共有できるようになり、結果として迅速な対応が可能になりました。
情報共有の強化ですね。これまでは、クレーム情報の通知先が直接の担当部署に限られていたり、他部署には情報の編集権限がなかったりといった問題がありましたが、今では関連部署すべてに通知が届き、編集権限も付与されるようになったことで情報共有の質や伝達スピードが向上しました。皆が同じ情報をリアルタイムで把握できるようになったことで対応状況の理解も深まり個別に説明して回る必要がなくなりました。また、依頼前に関連部署が自発的に対応を完了させたり、直接関係のない部署からも対応状況について問い合わせが来るなど、全社的に当事者意識が高まっていること実感しています。
以前はクレーム情報を紙などで管理していたので、過去の対応がどうであったのか参照できないケースが少なくありませんでした。これが、ECOAS クレームマネジメントの導入により過去の事例を容易に検索・参照できるようになりました。今後は過去の対応事例を積極的参照することで、迅速な対応やお客様満足度の向上につなげていきたいと考えています。また、クレーム対応に一貫性を持たせるという意味でも、情報を積極的に公開し、ガバナンスを効かせていきたいと思います。
クレーム管理システムフロー図
所在地:大阪府大阪市淀川区西宮原2-6-64
1945年創業。機械の操作スイッチをはじめとする制御機器の開発で培ってきたコア技術を活用し、工場などの製造現場や暮らしの身近なシーンを「より安全に、そして快適にすることで社会に貢献したい」という想いから、多様な製品やサービスを提供してきました。人はミスを犯すもの・機械は故障するものという前提のもと、不測の事態でも「人の命を守る」ことができる製品を開発することで、誰もが安全かつ健康で、幸せに、生き生きと暮らすことができる社会の実現を目指しています。
海外拠点のクレーム情報を
リアルタイムで把握
深刻化する前にトラブルの芽を摘む
プロアクティブな対応が実現
情報共有の「強化」と「仕組み化」に
取り組み、競争力を強化する。